哲学・倫理学

「なぜ?」から学ぶ西洋近代倫理思想史

倫理思想史II-a・bでは、イギリスの哲学者ホッブズを手始めに、さまざまな哲学者たちの思想とその影響について見ていきます。ホッブズといえば、人間の自然状態が戦争状態であると言ったことで有名ですが、「なぜ」自然状態は戦争状態なのでしょうか。本授業では、哲学者自身の著作を紐解き、その理由を批判的に検討します。

担当教員 檜垣 良成

授業の内容・特徴

自由という概念は、あまりにも当たり前で、取り立てて考えてみる必要もないように見えます。「何でもできるってことが自由なんだろう」とわたしたちは考えます。しかし、本当の自由とはそういうものではありません。自由には責任が伴うからです。
では、なぜ自由には責任が伴うのでしょうか。それは、わたしたちにとっての自由が複数の選択肢の中から一つをみずから意志して選ぶことを意味しているからです。つまり私たちが自由に振舞うということは、自分で主体的に何かを「選んだ」ということであり、だからこそその選択・決断の責任を自分で負わなければならないのです。

この授業では、ソクラテスやプラトン、ストア派やエピクロス派の哲学者たち、アウグスティヌスやカント、そして、サルトルやフロムの自由論を追思することによって、本当の自由とは何かを、じっくりと考えぬいてみたいと思います。
哲学・倫理学関係の学界では、たとえば「カントの自由論」というような個別的なテーマ研究はたくさん行われています。けれども、自由を通史的に考察する研究はほとんどなされていません。その意味で、古代から現代に至るまでの自由論の歴史を浮き彫りにしようとめざすこの授業は、他の大学の哲学や倫理学にはない特徴を備えていると思います。

担当教員より、高校生へのメッセージ

高校の「倫理」の授業は、哲学者や倫理学者の学説をおぼえることに中心がおかれていると思います。しかし、大学の倫理学の授業では、「おぼえる」ことは求められていません。大切なのは、教師が紹介する先学の学説や、それに対する教師の解説、あるいは教師自身の思想に触れることを契機として、学生諸君が「自分で考える」方法を身につけることです。
いくら考えても結論は出ないかもしれません。それでもなお考え続ける姿勢を崩さないようになること。そこにこそ大学の倫理学の授業の目的があります。

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